債権回収の方法・流れ裁判(通常訴訟・少額訴訟)

裁判の種類について

債務者との交渉が決裂したとしても、わが国では自力救済が禁止されているため、支払いを拒否する債務者に対して自ら強制的に取り立てを行うことはできません。債務者から強制的に債権の取り立てを行うためには、多くの場合、裁判所に訴訟を起こす必要があります。

訴訟は、中立公正な立場にある裁判所が、当事者間で争いになっている内容について、証拠に基づいて事実を認定して最終的な判断をする手続きをいいます。裁判所は、当事者それぞれの主張と提出された証拠から、原告の主張する権利が存在するかどうか審理します。この訴訟は通常訴訟のことを指すのが一般的ですが、より簡便な少額訴訟という訴訟手続きもあります。

少額訴訟は、その名称のとおり、請求金額が少額である場合に限って利用することができる手続きの訴訟です。具体的には、60万円以下の金銭支払いを求める場合に、簡易裁判所において利用することができます。通常訴訟は数回の弁論期日(裁判所で審理する日程)が開かれるため、解決までに時間がかかります。これに対し、少額訴訟では、原則として1日で審理を終え、簡易迅速に手続きを終わらせることができます。もっとも、少額訴訟は、相手方である被告が拒否をすれば利用することができず、その場合には通常訴訟に移行します。そのため、少額訴訟の利用は少ない状況が続いています。以下では、通常訴訟のことを訴訟といいます。(令和元年度の少額訴訟の新受件数は8,542件に対し、通常訴訟の新受件数は地方裁判所・簡易裁判所合わせて479,035件です。)

第1-2表
事件の種類と新受件数の推移 - 最高, 全高等・地方・簡易裁判所
  • ●地方裁判所
    年次 総数
    民事・行政
    民事事件
    総数 通常訴訟
    平成28年 581,472 576,644 148,307
    29年 593,795 589,230 146,680
    30年 588,921 584,856 138,444
    令和元年 596,374 592,640 134,934
  • ●簡易裁判所
    年次 総数
    民事・行政
    民事事件
    総数 通常訴訟 小額勝訴
    平成28年 845,792 845,658 326,170 11,030
    29年 882,120 882,030 336,384 10,041
    30年 922,936 922,831 341,349 9,310
    令和元年 884,831 884,754 344,101 8,542

参考:裁判所HP「司法統計」より抜粋

裁判の流れ・手順

(1)訴状や証拠の準備

訴訟は、原告となる者が裁判所に訴状を提出することで始まりますので、まず訴状を作成する必要があります。また、訴訟は、証拠に基づいて審理されることから、裁判所に提出する証拠(契約書等)も揃える必要があります。

訴訟は、当事者が自分で行うこともできますが、上記のとおり、訴状を作成し、必要な証拠を取捨選択しなければならず、裁判についてある程度の知識を有している方でも、その準備は容易ではありません。そのため、訴訟に関する専門知識を有する弁護士が代理人となって、依頼者の言い分を法的に構成し訴状を作成し、訴訟に必要となる証拠を選別します。また、裁判所は国家機関ですので平日しか開廷していないため、スケジュールを合わせられず、出頭できない人が少なくありません。弁護士が代理人になると、本人は原則として裁判所に出頭する必要がなくなりますので、この点においても弁護士に依頼するメリットがあります。

(2)管轄する裁判所を確認する

訴状の作成とともに、どの裁判所へ訴訟を提起するかも確認する必要があります。なぜなら、裁判所には管轄があり、全国どの裁判所でも訴状を受け付けてくれるわけではないからです。原則は、被告となる相手方の住所を管轄する地方裁判所に訴訟を提起することになりますが、原告の請求する金額が低い場合には簡易裁判所が管轄になることもあります。また、裁判所の管轄は当事者の合意によっても定めることができますので、訴訟の原因となる契約書で裁判所の合意管轄が定められているかどうかも確認する必要があります。なお、どの裁判所がどこを管轄しているかは、裁判所のサイトでも確認することができます。

(3)訴状の提出

訴訟を提起する準備が整えば、(2)で確認した管轄裁判所へ訴状を提出します。訴状には、原告の主張が根拠のあるものであることを裁判所に認めてもらうために、訴状提出時点で提出することができる証拠を一緒に提出します。ただし、証拠だけを提出しても、裁判所は、その証拠が原告のどの部分の主張の証拠となるのか判断できません。そのため、証拠説明書を添付します。証拠説明書は、「この証拠はこの部分の主張の証明のためにこのように使います」と証拠を説明するための書類で、この説明によって裁判所がわかるようにしておく必要があります。

(4)第一回口頭弁論

裁判所が訴状を受け付けると、いよいよ訴訟が始まります。訴状を受け付けた裁判所は、訴状の受け付けから原則として30日以内の日に第一回口頭弁論の期日を指定します。この期日の日時は原告の都合に合わせて設定されますし、訴訟を起こされたこと自体寝耳に水だというケースもあるでしょうから、第一回口頭弁論に出席することが難しい被告は少なくありません。そのため、第一回口頭弁論期日に限り、被告は答弁書という書面で原告の訴状の内容について意見を述べることで、裁判所へ出頭しなくても不利益を被ることをなくすことができます。したがって、第一回口頭弁論期日には、原告のみ出席することがほとんどです。

(5)口頭弁論の続行と弁論準備手続きの実施

被告から答弁書が提出された以降は、双方ともに準備書面という書面を裁判所に提出し、相手から提出された準備書面に対して、主張反論していくことになります。また、追加提出が必要な証拠が出た場合には、証拠説明書を添付のうえ、証拠も提出していくことになります。

また、証人や当事者から争点に関する事情を聴く必要がある場合には、弁論期日に証人尋問・当事者尋問を実施して、直接証人や当事者の言い分を聴き確認します。

なお、訴訟の進行は、一般的に、口頭弁論期日だけが続いていくのではなく、適宜のタイミングで、口頭弁論期日と口頭弁論期日の間に、当事者の紛争の内容を整理し、裁判所が何を重点的に審理すべきなのか判断するために、弁論準備手続きという原則非公開の手続きを行うことが通常です。また、コロナ禍の発生以降においては、書面による準備手続きを応用して、WEB会議システムによりオンラインで訴訟を進行させる手段も取ることが増えています。

(6)判決または和解

このように期日ごとに当事者双方が主張反論をします。そして、当事者が主張をし尽くしたと判断したら、裁判所は弁論を終結して判決をします。

また、裁判所は、訴訟が続いている間に、当事者に和解を勧めて和解による解決を目指すこともあり、むしろそちらの方が多いといえます。和解による解決は、ゼロ(敗訴)か100(勝訴)かしかない判決と異なり、50:50の間をとった解決方法をとることもでき柔軟な解決策を模索することができるうえ、当事者同士の関係悪化を防止することもできることから、合意内容を任意で履行してくれることが期待できるなど、和解ならではのメリットがあります。

裁判で判決を得た、もしくは和解したにもかかわらず、相手方から支払われない場合

当事者間で和解が成立すれば、訴訟は終了します。ただし、裁判所が判決を出したとしても、訴訟は必ずしも終了しません。訴訟で負けた方が控訴する可能性があるからです。控訴すると、訴訟は続行となり控訴裁判所に移り、改めて審理されることになります(控訴裁判所での判決に対して上告した場合も、同様に上告裁判所に手続が移ります。)。控訴されることなく、判決から2週間が過ぎると裁判所の判決が確定します。判決は確定することで、その内容について強制的に執行することができる効力が生じます(仮執行宣言付判決等の例外はあります)。

判決や和解で原告が被告から金銭や物品を請求できる権利が認められた場合には、判決文や和解調書にその対象が明記されますので、原告は被告に対して対象となった金銭や物品を請求します。しかし、この段階でも、裁判所が認めたからといって、原告が自力で被告から金銭などを回収することはできません。被告が金銭などの支払いを拒否すれば、やはり原告は訴訟の目的を達成することができないのです。

そのために強制執行(民事執行)という手続が認められており、この手続によって、国家が判決によって認められた請求を実現していくことになります。この強制執行については、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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