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債権回収とは、例えば、お金を他人に貸したのに、返済期限を過ぎても返済がない、あるいは商品を売ったのに、買い主が代金を支払わない、といった場合に、債権者が債務者から、約束通りに返済あるいは支払いをしてもらうことをいいます。
この債権回収には、大別すると二つの方法があります。任意に支払いを求める方法と、法的手段によって回収する方法です。
任意に支払いを求める方法には、電話やメール、直接会って交渉する方法や、相手の住所に請求書や督促状を送付する方法があります。後に法的手段をとることを見据えて、内容証明郵便で請求書や督促状を送付する方法もあります。これらの交渉や請求書の送付により、相手方が支払いをしてくれれば、時間や費用がかかる法的手段に頼ることなく、自分の債権を回収することができます。
相手が任意に支払いに応じてくれない場合は、法的手段によって回収する方法が考えられます。主な法的手段として、支払督促、民事調停、民事訴訟および強制執行の各手続きがあります。法的手段は法律上認められた制度で、債務者が応じない場合は強制的に債権を回収することが可能です。しかし法的手段には時間や費用がかかるので、まずは任意に支払いを求める方法で債権回収を試みることが一般的です。
債権回収を行うにあたり、容易にとりうる手段として、電話やメール、あるいは直接会って話し合う方法があります。時間も費用もそれほどかかりませんし、相手がこれに応じてくれれば債権回収ができます。いきなり法的手段をとるよりも、まずは冷静に話し合うことで、相手との関係の悪化も防げます。
書面で請求書を作成して相手の住所に送る方法もあります。相手にとっては請求書を見ることで、心理的なプレッシャーになりますし、自己の債務をあらためて認識し、任意に支払うことが期待できます。請求書には、支払方法(振込口座等)や支払い期限、請求額を記載して、回収する債務を特定すると、相手も対応がしやすくなり、よりスムーズに債権回収ができるでしょう。
電話やメールでの交渉、請求書の送付等をしても、相手が一向に支払ってくれない場合は、後に法的手段をとることも見据えて、内容証明郵便で支払督促状、催告状を送付する方法があります。内容証明郵便とは、いつ、どういった内容の文書を、誰が誰に対して送付したのか、ということを郵便局が証明する制度です。郵便局の窓口から送付できますし、インターネットを通じて24時間内容証明郵便を発送できるe内容証明(電子内容証明)という制度もあります。文書のテンプレートも郵便局のウェブサイトでダウンロードができます。訴訟を行う際の証拠書類ともなるので、債務者はより心理的プレッシャーを感じて任意支払いに応じてくれる可能性が高くなります。
債権は、法律で決められた期間内に請求、行使しないと、時効により消滅してしまいます(もっとも、消滅という効果を確定させるためには、「時効の援用」といって、債務者が時効の完成を主張する必要があります。)。
令和2年4月1日から施行された改正民法166条1項は債権の消滅時効期間を以下の通り定めています。
起算点 | 消滅時効期間 |
---|---|
債権者が権利を行使することができることを知った時 | 5年 |
権利を行使することができる時 | 10年 |
よって、これらの時効期間が経過して債権が消滅する前に、任意交渉段階であれば、債権者は債務者に対し催告(債務者に支払いを請求すること)をして、消滅時効の完成を猶予させる必要があります。催告は口頭でも可能ですが、証拠として残すために請求書などの書面で行うのがよいでしょう(その中でも内容証明郵便が確実です。)。催告をすると、時効の完成は6か月間猶予され、その間に訴訟提起や支払督促、調停申立等の法的手段をとると、時効の完成はさらに猶予されます(催告せずにいきなり上記法的手段をとっても時効完成は猶予されます。)。債権者は自己の債権の消滅時効期間を把握し、時効が完成する前に行動をとる必要があります。
支払いを遅滞している債務者というのは、経済的に厳しい状況にある場合が多く、他にも債権者が複数いることがよくあります。債務者の有する資産には限りがあるので、他の債権者が先に債権回収をした後に債権回収を試みても、債務者にもはや返済できる資産はなくなっていることがあります。債務者が破産手続き開始の申し立てをすると、債務者の残された資産を全債権者で分けるので、十分な債権回収ができません。そのため、他の債権者がいるか否かを確認し、いる場合は一刻も早く債権回収に乗り出すことが必要です。
期限までに支払いや返済をしない債務者というのは、経済状況がひっ迫し、返済したくてもできない、という場合もあります。任意的手段で債権回収を成功させるためには、当初の支払い期限や分割回数に固執するよりも、支払い期限の延期や支払い額、分割回数の変更を提案する方が現実的な場合があります。債務者の状況をよく把握し、支払い可能な計画を提案するのも一つの方法です。支払い条件を新たに合意したら、和解書・合意書を作成し公正証書とし、できる限り担保や保証人をつけてもらいましょう。
任意交渉はもちろん自分で行うことも可能ですが、弁護士が介入することで相手にさらに心理的プレッシャーを与えることができます。内容証明郵便を送るにしても、自分で送るよりも、弁護士の名前で送った方が、支払いに応じなければ法的手段をとる準備、意向があることを相手に伝えることができます。また、弁護士が間に入ると、債権者としても、債務者と直接交渉しなくてよくなりますので、心理的なストレスを軽減することもできます。
どの時点まで任意交渉を続けるか、早急に法的手段を講じた方がよいのか、債権回収の専門家である弁護士に相談をすれば、債務者の経済状況や他の債権者との関係等を考慮した上で、債権回収を確実にするための方法を提案してもらえます。時効完成の時期や、その猶予方法も提案してもらえます。任意交渉で執拗な脅迫行為や違法な取り立てをすると、債権者側が不利になることがありますが、そのようなことのないよう助言してもらえます。和解書・合意書を用意したり、公正証書にする手続きを頼むことができます。
債務者が支払いに応じない場合、法的措置を講じることになります。法的手段としては民事調停、支払督促、少額訴訟、民事訴訟といった手段がありますが、いずれも法律の知識がない個人・法人が自分で行うのは労力と時間がかかります。任意交渉段階から弁護士が入っていれば、スムーズに法的手段に移行することができ、より確実迅速に債権回収を図ることが可能になります。