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債権管理回収業は、弁護士法の特例として平成10年に制定された「債権管理回収業に関する特別措置法」(以下、単に「法」といいます。)が根拠法令になります(下記に引用した法第2条第2項参照)。当時の世相としてはバブル経済の崩壊によって発生した不良債権の迅速な処理が求められたために弁護士から専門業者へと門戸を広げ、新規参入の業者による不良債権処理の加速化が目的だったと思われます。
したがいまして、債権回収業の法定は、債権管理回収という弁護士業務の一部を外部化したという意義を持つことになります。
法第2条第2項
この法律において「債権管理回収業」とは、弁護士以外の者が委託を受けて法律事件に関する法律事務である特定金銭債権の管理及び回収を行う営業又は他人から譲り受けて訴訟、調停、和解その他の手段によって特定金銭債権の管理及び回収を行う営業をいう。
債権回収の場面における登場人物は、以下の通りです。
このうち債権者の譲受人と代理人については、弁護士も債権管理回収業者(以下「サービサー」といいます。)も、両者ともなることができます。サービサーについての根拠条文は以下の通りです。
法第11条
債権回収会社は、委託を受けて債権の管理又は回収の業務を行う場合には、委託者のために自己の名をもって、当該債権の管理又は回収に関する一切の裁判上又は裁判外の行為を行う権限を有する。
同条項に続く2項によりサービサーに対して裁判の制限がかけられています。
第11条2項
債権回収会社は、委託を受けて債権の管理若しくは回収の業務を行い、又は譲り受けた債権の管理若しくは回収の業務を行う場合において、次に掲げる手続については、弁護士に追行させなければならない。
- 一簡易裁判所以外の裁判所における民事訴訟手続、民事保全の命令に関する手続及び執行抗告(民事保全の執行の手続に関する裁判に対する執行抗告を含む。)に係る手続
- 二簡易裁判所における民事訴訟手続であって、訴訟の目的の価額が裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第三十三条第一項第一号に定める額を超えるもの
- 三簡易裁判所における民事保全の命令に関する手続であって、本案の訴訟の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えるもの
上記の通り、サービサーが裁判によって債権の回収を行う場合、簡易裁判所以外の裁判所による場合は弁護士に依頼する必要があります。つまり訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求までを自社にて裁判を行い、それを超える場合は弁護士に依頼する必要があります。
ただし、サービサーの許可要件として弁護士が常任役員である必要があるので、自社の弁護士により裁判を申し立てることもできるでしょう。そうでなければ、外部の弁護士に依頼する必要があります。
サービサーが扱う債権については法第2条に規定されております。法文のままではわかりづらい部分がありますが、以下の通り整理することができます。
なお、これは法務省の公表している「債権管理回収業に関する特別措置法の概要」を参考にしました。
サービサーとしての許可を受けるための要件をまとめると、以下の通りです。
なお、許可申請手続きの標準処理期間は、おおむね2か月とされています。
許可行政庁 | 法務省大臣 |
---|---|
許可要件 |
|
サービサーについては、以下の条文の通り、副業が原則として禁止されています。
第12条
債権回収会社は、債権管理回収業及び次に掲げる業務以外の業務を営むことができない。ただし、当該債権回収会社が債権管理回収業を営む上において支障を生ずることがないと認められるものについて、法務大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
- 一特定金銭債権の管理又は回収を行う業務であって、債権管理回収業に該当しないもの
- 二債権管理回収業又は前号の業務に付随する業務であって、政令で定めるもの
サービサーは、以下の条文により、同業者もしくは弁護士、弁護士法人以外に、債権の管理又は回収を委託してはならない旨規定されています。
第19条第1項
債権回収会社は、債権管理回収業に係る債権の管理又は回収を他の債権回収会社及び弁護士又は弁護士法人以外の者に委託してはならない。
また、反社会勢力への債権譲渡の禁止についても、以下の条文に定められています。
第19条2項
債権回収会社は、債権管理回収業に係る債権の譲渡(以下この項において「債権譲渡」という。)をしようとする場合において、その相手方が次の各号のいずれかに該当する者(以下この項において「譲受け制限者」という。)であることを知り、若しくは知ることができるとき、又は当該債権譲渡の後譲受け制限者が当該債権を譲り受けることを知り、若しくは知ることができるときは、当該債権譲渡をしてはならない。
- 一暴力団員等
- 二暴力団員等がその運営を支配する法人その他の団体又は当該法人その他の団体の構成員
- 三当該債権の管理又は回収に当たり、第十七条第一項若しくは前条の規定に違反し、又は刑法若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯すおそれが明らかである者
売掛債権(特定金銭債権に該当するものを除きます。)を買い取り現金化するいわゆるファクタリング業者は、サービサーに似た事業形態ではありますが、この事業を規律する法律はいまのところありません。そのため、ファクタリング専門業者は自由に事業を行える状態となっております。
ただし、業界としては悪質業者の排除を目的として自主規制団体である日本ファクタリング協会を立ち上げています。
(日本ファクタリング協会:http://www.j-factoring.or.jp/14898148940051)
そして、この協会の中で、「ファクタリングマネージャー」という業界資格制度を運営し、業界の法令順守について取り組んでいるようです。
弁護士とサービサーの関係をまとめると、サービサーは弁護士の下位に位置する債権管理回収専門業者であり、その違いは、サービサーの方は、裁判による回収に法律により制限がかけられている、また取り扱う債権が法律に明示されていること、再委託先が法律により限定されているのに対し、弁護士はこれらの制限がないことです。
他方で、サービサーには、法律によりその設立に際しての資金要件と人的要件があることや、運営について法務省の監督がなされているという信頼感もあるかと思います。ただし、サービサーが、あらゆる債権について、買取りや回収の受託をしてくれるわけではないことには留意する必要があります。
債権者の方が債権回収を第三者に委託するに当たっては、どちらがご自身の目的に合っているかをよく検討されることをお勧めします。