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    公開日:2020.10.30
    更新日:2022.06.27
    【民事執行法改正】給与債権の情報取得手続について弁護士が解説

    【民事執行法改正】給与債権の情報取得手続について弁護士が解説

    配偶者との別居や離婚の際に、婚姻費用や養育費の支払いが決まっても、途中で支払われなくなるケースも珍しくありません。
    また、例えば、傷害事件の加害者に対して裁判を起こし、慰謝料の支払いが認められたとしても、加害者に預貯金などの財産がないということもあります。

    このような場合、従来から婚姻費用や養育費を支払わない配偶者などの給与を差し押さえるという方法がありました。
    しかし、配偶者などの勤務先を特定しなければ給与の差し押さえをすることはできないため、勤務先が把握できず、給与の差し押さえができないということも多くありました。

    そこで、令和2年4月1日から民事執行法が改正され、債務者の勤務先を特定するために必要な情報を取得する手続き(給与債権に関する情報取得手続)が創設されることとなりました。

    • 給与債権
    • 情報取得手続

1、給与債権に関する情報取得手続とは

前述のように、養育費などが支払われない場合に債務者の給与を差し押さえるためには、債務者の勤務先を特定する必要があります。
しかし、債務者の勤務先がどこであるのかを把握するのは容易ではなく、実際に債務者の給与を差し押さえることは困難でした。
そこで、一定の要件のもとに、裁判所を通じて、市町村や日本年金機構などから、債務者の勤務先を特定するために必要な情報を取得することができるようになりました。
これにより、債務者に給与を支払っている会社などがあるかないか、あるとすれば、どこの会社なのかといった情報の提供を受けることができます。
このような勤務先の情報を提供してもらうための手続きを、給与債権に関する情報取得手続きといいます。

2、給与債権に関する情報取得手続の流れ

給与債権に関する情報取得手続は、債権者が裁判所に申し立てをすることから始まります。
債権者が裁判所に申立てをすると、裁判所は、手続きを実施する要件を満たしているかどうか審査します。そして、その要件を満たしているようであれば、市町村や年金機構等に対し、給与債権に関する情報を提供すべき旨を命じる決定を出します。この決定が債務者に送達されてから1週間以内に、債務者は執行抗告という不服申立をすることができます。
裁判所の情報提供命令を受けた市町村や年金機構等は、裁判所に対して回答書を送付する方法によって、債務者の給与債権に関する情報を提供します。
その後、裁判所から、申立人である債権者に対し、回答書の写しが送付されます。

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3、給与債権に関する情報取得手続の申立てをすることができる請求権

給与債権に関する情報が開示され、給与の差し押さえがされると、債務者の生活に与える影響が大きいため、給与債権に関する情報取得の申立てをすることができる者はその必要性が特に高い場合に限定されています。
具体的には、下記のとおりです。

  1. ①養育費等の扶養義務等に係る請求権を有している場合
  2. ②人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有している場合


また、これらの請求権を有しているだけでなく、裁判所による確定判決や調停調書などを取得していることも必要になります。

4、給与債権に関する情報取得手続の要件

  1. (1)債務名義の取得

    前述のように、給与債権に関する情報取得手続の申立てをするためには、確定判決や調停調書などを取得しておく必要があります。これらの確定判決や調停調書など、強制執行をするために必要となる文書を債務名義といいます。
    給与債権に関する情報取得手続の申立てをするためにも債務名義が必要です。

  2. (2)強制執行の不奏功等

    勤務先に関する情報は、債務者のプライバシーなどに関する情報を強制的に取得することになるため、その必要性が高い場合に限って認められるのが相当と考えられています。
    そこで、①強制執行などにおける配当等の手続きにおいて、完全な弁済を得ることができなかったこと又は②知れている財産に対する強制執行を実施しても、完全な弁済を得られないとの疎明があったことが必要とされています。
    具体的には、債務者の預金債権を差し押さえて配当の手続きが行われたものの、請求額の一部しか配当が得られなかった場合や、債権者に判明している債務者の財産を全て差し押さえたとしても全額の弁済が得られないことが明らかな場合などが該当します。

  3. (3)財産開示手続の前置

    債務者の財産に関する情報についても保護の必要性を配慮しなければならないことから、給与債権に関する情報取得手続きの申立てに先立って財産開示手続きの実施をすることが求められています。給与債権に関する情報取得手続きの申立ては、財産開示期日から3年以内に限り行うことができます。

5、給与債権に関する情報取得手続によって提供される情報

給与債権に関する情報取得手続の申立てにより、特別区を含む市町村や日本年金機構等の公的機関から、債務者の勤務先を特定するのに必要な情報を取得することができます。どの公的機関から情報の開示を受けるかは、債権者が選択することになります。
そして、これらの公的機関が、債務者に対して給与を支払っている会社等を把握している場合には、その会社等の氏名、名称、住所に関する情報が提供されることになります。

6、まとめ

給与債権に関する情報取得手続により、これまで把握することが困難であった債務者の勤務先に関する情報の取得が容易となりました。
もっとも、その申立てには専門性が要求されます。ベリーベスト法律事務所では、これまで様々な執行手続きを多数取り扱っております。養育費等の支払いを受けられず、給与の差押をご検討される際にはぜひご相談ください。

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