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    公開日:2021.03.18
    更新日:2022.06.27
    債権回収には時効が存在する! 時効の援用や中断(更新)方法について

    債権回収には時効が存在する! 時効の援用や中断(更新)方法について

    「商品の代金を踏み倒されている」という場合は、すみやかに支払ってもらうための何らかの手立てを打たなければ、時効(消滅時効)が到来してしまいます。時効が到来すると、債権回収ができなくなってしまう可能性があるのです。

    令和2年4月1日に施行された改正民法では、時効に関するルールも大幅に変更されています。今回は、時効における民法の改正点もふまえながら、債権回収を検討する際に必要となる消滅時効の知識について解説します。

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1、民法改正によって消滅時効のルールが変更に

消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間経過すると権利がなくなってしまう制度のことを指します。

消滅時効に関する民法の改正点の概要を見ると、まず時効のカウントの方法が客観的起算点・主観的起算点の2つになりました。また、消滅時効の成立する時期は債権の種類によりバラバラでしたが、今回の改正でほぼ統一化されています。さらに、今まで時効の中断・停止と言っていたものが、それぞれ「更新」「完成猶予」という文言に変更されたことも特徴的な改正ポイントと言えるでしょう。

ここではまず、消滅時効の起算点について見ていきたいと思います。

  1. (1)客観的起算点による時効・主観的起算点による時効

    時効の起算点について、改正民法では2つ設定されました。旧民法では、消滅時効の起算点は「権利を行使することができるときから」のみでした。権利を行使することのできる状態は客観的に把握できるものなので、これに基づく時効の起算点のことを「客観的起算点」といいます。

    一方、改正民法では消滅時効の起算点について、新たに「権利を行使できることを知った時から」という文言が追加されました。これは、権利を行使できる人物の主観的な認識に基づく起算点なので、「主観的起算点」といいます。

    改正民法では、「権利を行使できることを知った時から5年間」「権利を行使することのできる時から10年間」の2つの時効期間が併記されています(新法166条)。したがって、このいずれか早く到来したほうで消滅時効が成立することとなりました。

  2. (2)不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効

    不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は

    1. ①被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間
    2. ②不法行為の時から20年間


    とされており、旧法と変わりありません。

    しかし、改正民法では②の「不法行為の時から20年」の意味合いが変わりました。
    もともと②は「この期間をすぎれば当然に債権が消滅するのであって、時効の援用も必要ない」とする「除斥期間」という位置づけでした。ところが、新法724条でこの20年間も「時効期間」と定義づけられたのです。そのため、不法行為の時から20年以上経っても、時効を主張するためには時効の援用が必要となりました。

  3. (3)生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効

    不法行為の中でも、特に生命・身体の侵害による損害賠償請求権はより手厚く保護されるべきでしょう。そういった観点から、改正民法では、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効が延長されました。

    具体的には、生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効は、加害者を知った時から5年間となっています(不法行為の時から20年間という時効期間については変わりがありません)。
    また、債務不履行により生命・身体を侵害した場合についても、その損害賠償請求権の時効期間は権利が行使できる時から20年間に延長されています。

  4. (4)改正民法の時効が適用されるのはいつから?

    改正民法は令和2年4月1日より施行されましたが、この世の中にあるすべての債権についてこの時点を境に改正民法が適用されるわけではありません。令和2年4月1日以降に生じた債権は改正民法が適用されますが、令和2年3月31日以前に発生した債権は、旧民法での消滅時効が適用されます。債権回収をする際は、債権がいつ発生したものかを十分に見極めたうえで検討するべきと言えるでしょう。

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2、債権の消滅時効の期間について

消滅時効の期間について、旧民法では非常に細かく規定が分かれていましたが、改正民法では特殊な債権を除き統一されました。ここでは、その違いについて見ていきましょう。

  1. (1)旧民法での消滅時効までの期間

    旧民法下では、消滅時効は「権利を行使できる時から10年間」と規定されていました。しかしその一方で、時効消滅期間は職種や債権の性質によって、また取引が私人間取引であるか商取引であるかによって、以下のように細かく定められていました。


    旅館・飲食店などの料金 1年
    演芸を業とする者の報酬債権
    運送料金
    生産者、卸売・小売商人の商品代金 2年
    弁護士報酬など
    注文により物を制作したり、他人のための仕事を業とする職人の報酬
    病院の治療費 3年
    工事業者・設計士の報酬
    商取引で生じた債権(商事債権) 5年


    例えば、保証債務の場合でたとえば債権者と債務者が個人、連帯保証人が企業だった場合は、契約取引が私人間どうしのものであっても、時効については商事債権の5年となります。

  2. (2)現行民法での消滅時効までの期間

    改正民法では、上記のように細かく分かれていた規定が廃止され、以下のとおり統一化されました(新法166条)。

    1. ①権利を行使できることを知った時から5年間
    2. ②権利を行使できる時から10年間


    ただし、定期金債権や先述の不法行為に基づく損害賠償請求権など特殊な債権については別途規定が設けられていますので、注意しましょう

3、債権の消滅時効を中断(更新)する方法は?

債権回収をしたくても、何も手立てを打たなければ時効の成立によって債権が消滅し、回収できなくなってしまいます。時効が成立してしまうのを防ぐためには、時効の進行を中断させなければなりません。では、どうすれば時効の進行が中断できるのでしょうか。

  1. (1)時効の中断も民法改正によって見直された

    旧民法では、時効の成立を防ぐための方法として、時効の「中断」または「停止」がありました。時効の中断とは、今まで進行していた時効期間がいったんゼロになり、中断事由がなくなったときには、また一から時効期間がカウントされます。時効の停止とは、時効の進行をいったん止め、停止事由がなくなったときには停止した時点から時効完成までの残りの期間が経過すると時効が成立するものです。

    この時効の「中断」「停止」が、改正民法でそれぞれ「更新」「完成猶予」へと文言が変更されました

  2. (2)債権の消滅時効を中断(更新)する方法は?

    債権の消滅時効を中断・停止(更新・完成猶予)する方法は、改正民法で以下のとおり定められています。それぞれどのような事由で時効の完成猶予・更新できるのでしょうか。

    <時効の更新をするとき>
    以下の事由があれば、事由が終了したときから新たに時効が進行します。

    • 確定判決・確定判決と同一の効力を有するものによる権利の確定
    • 強制執行・担保権の実行・担保権の実行としての競売・財産開示手続
    • 権利の承認


    <時効の完成猶予をするとき>
    時効の完成猶予の場合は、債権回収のために取る手段により、時効の完成を猶予される期間が異なりますので、以下の表を参考にしてください。

    時効の完成猶予事由 時効の完成が猶予される期間
    裁判上の請求・支払督促・訴訟上の和解・調停・倒産手続への参加 事由の終了時(確定判決等により権利が確定することなく終了した場合は終了後6か月が経過した時)まで
    強制執行・担保権の実行・担保権の実行としての競売・財産開示手続 事由の終了時(申立ての取下げ・取消しの場合は、その時から6か月が経過した時)まで
    仮差押え・仮処分 事由が終了した時から6か月を経過した時まで
    催告 催告の時から6か月を経過した時まで
    権利についての協議を行う旨の書面による合意
    • 合意があった時から1年を経過した時まで
    • その合意において当事者が協議を行う期間を定めたときは、その期間を経過した時
    • 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6か月を経過した時
    天災その他避けることのできない事変 障害が消滅した時から3か月を経過した時まで

4、債権の消滅時効が迫っている場合や時効が完成してしまった場合は?

相手の会社に催促をしても無視されたり居留守を使われたりして債権回収ができず、時効が迫ってしまった、あるいはもう時効が完成してしまった、ということもありえます。その場合でも、あきらめる必要はありません。債権の消滅時効が迫っている場合、もしくはすでに時効が完成してしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

  1. (1)消滅時効は債務者が主張(援用)することで効果が生じる

    仮に消滅時効が成立する期限を過ぎても、ただちに債権回収ができなくなるわけではありません。消滅時効は、債務者が「もう時効だから」と主張(援用)することによってはじめて成立するものです。そのため、消滅時効の期限を過ぎていたとしても、債権を回収することには何の問題もないのです。

    また、消滅時効の期間が過ぎてから相手方がわずかな金額でも支払った(返済した)場合は、債務の存在を認めたことになり、時効は更新されるので、相手方は時効を主張することはできないとされています。

  2. (2)債権者が取るべき方法について

    確実に債権回収するには、裁判手続きに持ち込むことが効果的ではありますが、そうすると時間や手間暇がかかり、時効の期限までに間に合わない可能性もあります。そこで、消滅時効が目前に迫っているときには、以下のようなできるだけ簡便な方法で債権回収することを模索すべきでしょう。

    ◆ 内容証明郵便などで催告する
    内容証明郵便を使って債務者に督促状を送るなどして催告を行うことで、時効の完成が6か月間猶予されます

    ◆ 債務者の持つ自社の債務と相殺する
    債務者側が自社に対して債権(自社にとっての債務)を持っている場合は、それらを相殺することで、債権回収したのと同じ効果が得られます

    ◆ 協議を行う旨の合意を取りつける
    債務者側に「支払い(もしくは返済)について協議をしよう」と話を持ち掛け、相手方がそれを受け入れる意思を示せば、協議を行う旨の合意を取り付けたことになります。この合意があった時から1年間あるいは1年以内の合意をした場合は、時効の完成が猶予されます。ちなみに、この合意は書面もしくは電磁的方法(メールなど)で行うことが必要とされていますが、署名・押印は不要です。

    ◆ 支払督促を利用する
    相手方がいろいろ理由をつけて支払いをしようとしない場合は、支払督促を申し立てる方法もあります。支払督促は裁判所を介する手続きではありますが、訴訟よりも手続きが簡易かつ短期で申し立てができます。また、裁判所から支払督促が発令されることとなるので、内容証明郵便よりも相手の支払いを促せる可能性が高まります。

5、まとめ

だれが相手でも債権回収は気が引けるものです。特に古くから付き合いのある会社や、相手方の担当者と親しい間柄である場合は、言いだしにくいことも多いでしょう。しかし、債権回収をしなければ、自社の経営に少なからず影響を及ぼします。

ベリーベスト法律事務所では、債権回収のご相談に応じています。弁護士があなたの会社に代わって相手方と交渉し、スムーズに債権回収できるよう尽力いたします。相手方が支払いや返済に応じず法的措置をとる場合は、自分自身ですべて手続きを行うのは難しいですが、弁護士に依頼すればすべてお任せできます。どうぞお早めにご相談ください。

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