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多くの時間とコストをかけて裁判をして金銭債権の判決を取得したとしても債務者の財産の所在がわからず、苦労して取得した判決が何も意味をなさないということがあります。
また、辛い思いをして、協議離婚や離婚調停をして、養育費の公正証書や調停調書があっても、相手の財産がわからずに強制執行できないということもあります。
せっかく、このような判決文や公正証書、調停調書を持っていても、債務者の財産の所在がわからず、債権の回収ができないという事態が多々あったこと等も踏まえ、民事執行法が改正されました。改正事項は複数ありますが、今回は、債務者の有する財産の情報を開示する手続きの改正についてご説明します。
財産開示手続とは、債権者の申立てにより、裁判所が債務者を裁判所に呼び出し、債務者に自己の財産について陳述させる手続きです。
改正前の民事執行法では、債務者が裁判所に出頭しなかったり、虚偽の供述を行ったりした場合は、30万円以下の過料が科されることが規定されてはいました。
上述のように、財産開示手続は、債務者に自己の財産を陳述させることで、債権者は、債務者の有する財産の所在等の情報を知ることができます。そして、債権者は債務者が陳述した財産の情報を基にその財産に強制執行をすることが期待されていました。
しかし、財産開示手続は当初の期待通りにはいかず、債務者が裁判所からの呼び出されても出頭しないケースが多くありました。
実際に、平成29年度の財産開示手続の申立件数のうちの約40%は債務者が不出頭で手続きが終了しており、財産開示手続は債権回収の手段としては、実効性が高いとは言い難い状況でした。
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今回の改正の過程で、従前の30万円以下の過料では、債務者に対する制裁が弱いという指摘がありました。実際、債務者が、強制執行されるよりも、過料を払ったほうが安く済むと考えた場合、債務者は出頭しなかったり、虚偽の陳述をしたりする可能性があります。
このようなことから、改正法では、不出頭や虚偽の陳述をした場合は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるようなりました(改正民事執行法第213条第1項)。
過料と異なり懲役と罰金は刑事罰です。
これによって、債務者が刑罰に科されることを恐れて、出頭し、真実を陳述することが期待されています。
このように、改正された財産開示手続は債務者に対して、大きな心理的圧力をかけることで、債権回収のためにより実効性のあるものに改正されたといえます。
従来は、財産開示手続の対象は判決や調停調書等に限られていました。
改正法は、上記に加え、仮執行の宣言を付した支払督促、仮執行の宣言を付した損害賠償命令、金銭等の支払いを目的とする内容の公正証書等も財産開示手続の対象になりました。
この改正により、例えば、従来は公正証書で養育費を定めていた場合は、財産開示手続の申立てをすることができませんでしたが、改正法により、財産開示手続を利用できるようになりました。
財産開示手続の要件は、改正が行われず、下記のいずれかに該当する場合に財産開示手続を申し立てることができます。
また、財産開示手続において、債務者が財産開示をした場合、原則として、財産開示手続を申立てた日から3年以内は財産開示手続が実施できません。
ここでは詳述しませんが、今回の改正で、新しく不動産に関する情報取得手続及び給与に関する情報取得手続という手続きが創設されました。
財産開示手続は上記手続きをするための要件となっておりますので、財産開示手続をとる際は、上記の手続きを念頭におく必要があります。
今回の財産開示手続の改正により、債権者は債務者の財産の所在を把握できる可能性が高くなり、債務者に対して強制執行をかけ、債権回収の可能性があがるものと期待されています。
よって、今後は、財産開示手続の申立てが従来よりも増えると思われます。
もっとも、財産開示手続は、債務者に対し呼び出しを行うため、自分が債権を回収しようとしていることを知られて、財産を隠匿されるリスクがあります。
また、他に債務者の財産の情報の収集手段として弁護士会照会があり、こちらは債務者に知られずに収集できますが、収集できるものは限界があります。
これらの方法の中のうち、どの方法で債務者の財産の情報の収集をするのが、債権回収のため効果的であるかの判断は、専門家の判断を要しますので、是非一度ご相談ください。