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裁判などにより、請求権が認められた場合でも、債務者が任意に支払ってこないことがあります。債務者が任意に支払わない場合は、民事執行法にもとづいて、債務者の財産に対して強制執行を行うことができます。
もっとも、強制執行を行うには、債権者が、具体的に、債務者がどこに、どのような財産を保有しているのかを特定する必要があります。しかし、債権者が、債務者の財産情報を詳細に把握しているケースは少ないうえに、仮に把握していたとしても、債務者が、後に執行逃れのために財産を隠匿してしまうこともあり、結果的に強制執行が空振りに終わってしまうことが多々あります。
そこで、改正民事執行法では、強制執行の実効性を確保するため、債権者が、債務者の財産情報を取得できるようにする制度が新設されました。以下では、新設された制度のうち、不動産に関する情報取得手続き(民事執行法第204条~)について説明します。
不動産に関する情報取得の手続きは、まず、裁判所に対して不動産に関する情報取得手続きの申立てを行うことから始まります(民事執行法第205条第1項)。申立てを行う裁判所は、原則として債務者の住所地を管轄する地方裁判所となります。
不動産に関する情報取得手続きは、債務者以外の第三者に対して情報開示を求める手続きですから、申立てを行う前に、まず債務者本人に対して財産開示手続き(民事執行法第196条~)を行うことが必要です(民事執行法第205条第2項)。
財産開示手続きにより、債務者から財産情報の開示が得られれば、強制執行の対象となり得る財産を発見することができますが、財産開示手続きが空振りに終わってしまった場合には、債務者から財産開示を受けることができないわけですから、第三者から情報取得する必要性が認められます。
不動産に関する情報取得手続きを行うには、財産開示手続きを先行させる必要がありますので、不動産に関する情報取得手続きを申立てる前に、民事執行法第197条第1項の要件を充たす必要があります。具体的に、債権者が有する金銭債権についての債務名義の正本を用意して執行力を得たうえで、事前に把握できていた債務者の財産に対し強制執行を行い、完全な弁済を受けることができなかった場合に、不動産に関する情報取得手続きの申立てができます。事前に強制執行を行わない場合には、裁判所に対し、知れている債務者の財産に対して強制執行を行っても、完全な弁済は得られないということを疎明する必要があります(民事執行法第205条第1項第1号)。
なお、財産開示手続きを先行させることについて、不動産に関する情報取得手続きの申立ては、財産開示手続期日から3年以内に行う必要があることに注意しましょう(民事執行法第205条第2項)。
不動産に関する情報取得手続きの申立てを行い、申立てが認容された場合、裁判所は、法務省令で定める登記所に対し、債務者が所有権の登記名義人である土地又は建物その他これらに準ずるものとして法務省令で定めるものに対する強制執行又は担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項として最高裁判所規則で定めるものの情報を開示するように命じます(民事執行法205条1項)。「債務者が所有権の登記名義人である土地又は建物」以外の情報は、法務省令で定めるものとされていますが、地上権、永小作権、賃借権又は採石権や、債務者が表題部所有者として記録されているものなどが考えられるでしょう。
債務名義がない場合は、通常のご相談料金のご案内となります。
裁判所から登記所に対し、情報提供命令が出された場合、債権者は、執行裁判所を通じて、登記所から、債務者の不動産に関する情報を取得することができます(民事執行法第208条第1項、第2項)。これにより、強制執行手続きの実効性は格段に高くなります。
もっとも、不動産も含めて債務者の保有する財産に関する情報は、個人情報として保護される対象のものであり、民事執行手続きの実効性を確保する観点から、例外的に開示されるものです。
そこで、民事執行法は、申立人及び記録の閲覧等により情報を取得した債権者に対し、第三者からの情報取得手続きによって得られた債務者の財産に関する情報を、債務者に対する債権をその本旨に従って行使する目的以外の目的で利用したり提供したりすることを禁止し、違反した場合は過料が発生します(民事執行法第210条、第214条第2項)。
不動産に関する情報取得手続きは、民事執行法の改正により新設された制度ですが、施行されるのは改正民事執行法が公布されてから2年を超えない範囲内において政令で定める日からとされています。
この制度の利用を検討される際は、民事執行制度に精通した弁護士にご相談されることをおすすめします。